教育方針と教育プログラム
教育方針
人類は地球上に出現してから,自らの生存のために自然に働きかけ,食料,衣類や住居などを調達してきました。その過程で,自然の論理性(自然の摂理)を学び取り,その成果を科学技術や文化・文明として,現代に開花させています。その結果,ある視点から見れば,生活は豊かになり,生活水準は飛躍的に向上したと言えるでしょう。一方,豊かさを求めた結果,その持続性をゆるがすような意図しなかった結果も現れました。それが環境問題です。たとえば,地球温暖化,オゾン層破壊,大気・水質・土壌汚染,廃棄物問題,自然破壊などは,今や地球規模に及び,人類はもとより,他の生物の生存をも脅かす深刻な事態に至っています。このような状況のもと,環境に関わる諸問題を解決・克服し,同時に,自然との調和を図りつつ(自然との共生),社会・経済が持続的に発展できる循環型社会の構築が求められています。
そこで本学科では,新しい学問分野として下記の5つの柱からなる「環境創造学」を掲げ,これらの柱を基本とした教育を行い,環境に携わる技術者・研究者の養成を目指します。
[環境創造学]
(1) 環境に配慮した生活態度と環境問題を発生させない心構えを醸成させる。(環境の心)
(2) 自然の論理性を的確に把握する。(自然の論理性の把握)
(3) 良好な環境の保全と悪化した環境の復元・改善に取り組む。(環境の保全と復元・改善)
(4) 自然との調和を図る。(自然との共生)
(5) 新しい環境システムを創出する。(環境創造)
上記の「環境創造学」を実現する人材に必要な知識や能力を以下の5つの要素に整理し,これらの醸成を図るべくカリキュラムを編成しています。
[環境創造学のための5つの要素]
1) 多様な価値観と基礎知識
2) 技術者倫理と環境倫理
3) 専門基礎知識とその応用
4) コミュニケーション能力
5) 高度な技術者への基礎作り
授業科目は,環境を論じる対象領域を,気圏・水圏・地圏を対象とする「自然環境」,都市や住居などを対象とする「都市・住環境」の2つの系に大別して配置しています。また,履修方法として,「環境総合プログラム」と「環境創造プログラム」の2つの教育プログラムを用意し,選択幅の広い自由な履修方法とするか,学科の科目群をバランスよく選択して履修するかを選択できるようにしています。
教育プログラム
[環境総合プログラム:General Environmental Science and Engineering]
「環境総合プログラム」では,学科開講する科目を履修することで,上記の5つの知識・能力を習得することを目標としています。このプログラムは科目の選択の幅が広く,各学生の目標や個性に合わせた自由度の高い履修計画を立てることが可能です。これにより,豊かな教養を身に着けることを目指します。
[環境創造プログラム:Environmental Science and Engineering]
「環境創造プログラム」は,グローバルな視点から環境問題に取り組むことができる素養を持った技術者の育成を目標としています。このプログラムの修了生は,JABEEによる認定を受けた場合(平成27年度に継続審査申請予定),技術士となるための最初の試験である技術士一次試験が免除され,日本技術士会に登録することで,技術士の前段階の資格である「技術士補」となることができます。
環境創造プログラムでは前述の環境創造学のための5つの要素を基本として,さらに下記A~Gの学習・教育到達目標を定め,それぞれの目標に対応した科目群をバランスよく履修できるよう,履修要件を定めています。
【環境創造プログラム 学習・教育到達目標】
[多様な価値観と基礎知識]
A多様な価値観を形成するため,幅広い知識を習得する。
A-1人文科学や社会科学などの基礎知識を習得する。
A-2自然科学や数学・情報科学の基礎知識を習得する。
[技術者倫理と環境倫理]
B技術者としての倫理観を形成するため,環境と技術のありかたを理解する。
[専門基礎知識とその応用]
C 都市・住環境,自然環境(気圏・水圏・地圏)の基礎知識を習得する。
D 環境に関わる現象を把握(観察・観測・計測)する能力を習得する。
D-1都市・住環境,自然環境(気圏・水圏・地圏)に関する計測技術の基礎を習得する。
D-2 観察・観測・計測の結果をもとに,総合的に現象のメカニズムを見いだす能力を習得する。
E 環境の改善と新たな環境の創出のための問題を設定し,解決策を立案する能力を習得する。
[コミュニケーション能力]
F状況を把握し,情報を発信するためのコミュニケーション能力を習得する。
[高度な技術者への基礎作り]
G 自発的・継続的な学習能力の基礎と,課題解決のための計画・管理能力を習得する。
G-1技術革新や社会状況の変化に対応できるように,自ら考える・学ぶ能力を習得する。
G-2 与えられた制約下で適切な解決策を見いだし,実行・管理する能力を習得する。
プログラムの選択方法
プログラムの選択は,2年次終了時に学生の希望と個人面談により決定します。選択したプログラムの変更は,原則として認められません。
補足説明
成績評価に関連する,レポート,図面,答案用紙や卒業論文・作品は,教育水準を証明する証拠資料として数年間保管されます。
教育点検・改善システム
当学科では,上に挙げた2つの教育プログラムをより良いものにするため,教育点検・改善システムを設けています。教室会議や教育内容委員会,教育方針委員会などにおいて,教育に関する審議・決定や点検評価,改善策の検討がおこなわれています。会議や委員会はそれぞれの規約に基づき運営されています。なお,教育点検・改善システムについては,現在,よりよいシステムを目指した改善を検討中です。